本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
ある奴隷少女に起こった出来事(ハリエット・アン・ジェイコブズ)

1813年生まれのアメリカに実在した無名黒人女性の手による自叙伝。あまりにも素晴らしい内容のため、白人著者による創作小説とみなされて長らく忘れられていたが、彼女の直筆の手紙が研究者の目にとまり、出版から126年もたって「奴隷黒人女性が書いたノンフィクション」として再発見され、あまたの古典小説と並んで今世紀のベストセラーとなっている。

…文庫化されてやっと読んだー。
文字通リ、読みだしたら止まらなくなってイッキ読み。

優しい女主人のもとで穏やかな幼年時代を過ごすも、女主人の死後、好色な医師フリントの一家へ売り渡されたことからヒロイン・リンダの苦難が始まる。美しく成長した彼女は医師から性の対象としてつけ狙われ、それと闘い続ける。別の白人男性と子を成すことで自分と子どもを自由黒人にしようと画策したり(結局はかなわなかったが)、7年間も狭い屋根裏に隠れ続けたり、ついに南部を脱出して新天地ニューヨークで働き、子どもたちと再会したり、しかしそこへも医師フリント一家の追跡の手が伸びてきたり…。

「ただ事実を記した」波乱万丈な半生のみならず、彼女の黒人ばかりか白人をも不幸にする奴隷制への洞察も本作に深みを与える。

「奴隷制は、黒人だけではなく、白人にとっても災いなのだ。それは白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻をみじめにする。」

「現代少女のための新しい古典文学」だとする熱い訳者あとがきも読みごたえあり。

「正直、奴隷少女が自分らしく生きるために感じなければならかった心情が、現代の日本の少女にとってかけ離れたものであるとは私には思えない」
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