本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
英国メイド マーガレットの回想
英国メイド マーガレットの回想英国メイド マーガレットの回想
(2011/12/22)
マーガレット・パウエル

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訳者は村上リコ、表紙絵は森薫。以前「英国メイドの日常」を読んだあと、引用されている日記や自伝の全訳が無性に読みたくなったが、その期待に応えてもらった感がある本書。

最下層のキッチンメイド→コック→結婚→再びコック→引退後の1968年に本書が執筆され、その評判から作家となった女性の自伝。最下層メイドの仕事の重労働ぶりがいろいろと悲惨なんだけど、暗くはならず威勢のいいカラッとした筆致で綴られている。しかしこの時代、この階層に生まれて少々虚弱だったりした日にゃ、もうとっとと死ぬしかないな…。

マーガレットはへこたれない。劣悪な職場へ見切りをつけ、なんとか“紹介状”を得て、よりよい職場に変わっていこうとする(この時代、前雇い主の紹介状がないと次の職場は最底辺からリセットせざるをえないので、何としても紹介状をもらって辞職しなくてはいけなかった)。コックとしてまだ経験が浅くても、年齢もサバを読み、ハッタリで自信あるようにふるまい、ウラで「ビートン夫人の料理書」を教科書に、独学でレシピをものにしてく。

使用人を「使用人としても尊重しない」酷い雇い主や、「使用人として大事にしてくれる」優しい雇い主やらいろいろいるけれども、「雇い主たちの階上」と「使用人たちの階下」との間には越えられない壁がある現実をシビアに見つめる観察力も鋭い。それがあるから、苦労しました大変でしたーという単なる回想苦労話と一線を画している。

本書の後半、結婚を機に家庭に入り、間をおいて再びコックとして勤め始めたら、すっかり時代は変わっていた。使用人の立場は強くなり、雇い主階級は没落。時代にとりのこされた哀れな人たちへの観察描写も読み応えある。

時代背景を解説する丁寧な日本版註がそれぞれの該当ページ中に掲載されている親切なレイアウト。同じページに註があるのは編集的に大変だろうけど、別ページにまとめられていると読みに行くのが面倒くさいから助かる。
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コメント
この記事へのコメント
『英国メイドの日常』読むつもりでいたのに、買うことも忘れてました。この機会にまとめて買っとこうと思います。ご紹介ありがとうございます。

2012/02/17 (金) 22:34:57 | URL | おごんち #SFo5/nok[ 編集]
どちらの本も手許に置いておきたい良い内容でした。村上リコさんのこれからの仕事にも期待してしまいます。
2012/02/18 (土) 09:11:59 | URL | ヨモヤマ #-[ 編集]
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