本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
羆嵐(吉村 昭)
羆嵐 (新潮文庫)羆嵐 (新潮文庫)
(1982/11)
吉村 昭

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三毛別羆事件の小説化。ドキュメンタリー小説というのだろうか、綿密な下調べの上でのほぼ事実に沿った記述ながら、小説的演出も味わい深い。

読者が感情移入しやすい「区長」という村をまとめる中間管理職的な人物が語り部。彼の目を通して、羆への恐怖、死者への哀悼、討伐隊への期待と失望、老練な猟師への畏敬の念が語られる。

羆を仕留める猟師は、実在の「山本兵吉」から「銀四郎」に名を変え、酒乱で乱暴者の性格破綻者として描かれている(事件前に銃を質入していたのは本当なので、ちょっとは問題あった人だろうけど)。平和時であれば嫌われ者の銀四郎。だが、自信満々にやってきた討伐隊はただ人数と銃器があるだけで、羆にはまったくの素人。何度も仕留めるチャンスを逃す。村人たちは、プロフェッショナルである銀四郎にしかあの羆は倒せない、と望みを賭ける。

銀四郎は追跡する集団には加わらず、たった一人で羆を追う。「区長」はそれを間近で見届け、恐怖と闘い続けるがゆえの銀四郎の荒れた性格を慮るようになる。

「羆を倒す者は孤独であること」

無力な集団と、孤高の猟師の対比。異端の悪魔は、やはり異端のものに屠られる。神話だ~。

「シャトゥーン」への不完全燃焼感がこっちで満たされた。比べるものではないかもしれないけど、小説としての濃さが違う…。

倉本総の「解説にかえて」がまた素晴らしい。事件のドラマ化を依頼された氏が、あのヒグマ撃ちとなった大川春義氏(既に引退)とともに、惨劇の地を訪れるという内容。
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コメント
この記事へのコメント
面白そうですね
こんばんわ。ダヴィンチ今月号を読んで、山岸先生の荒業とまだまだ続くひっぱり具合に呆れつつこちらへ来ましたが、熊の本読みたくなりました。

吉村昭氏「高熱隧道」も凄い迫力だったです。やたらと人死にが出る戦前の黒部ダム工事の話でしたが…
2010/07/07 (水) 23:34:21 | URL | ボースン #s/LT7tYs[ 編集]
テレプシ
荒業(笑)

2ヶ月あけといてあのロクに進まない展開には驚かされました。

「高熱隧道」、これは熱そうな…真夏向けの読書かも。プロの男たちが死力を尽くすお話は燃えますね。
2010/07/08 (木) 17:10:11 | URL | ヨモヤマ #-[ 編集]
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