本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
代替医療のトリック
代替医療のトリック代替医療のトリック
(2010/01)
サイモン シンエツァート エルンスト

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著者の一人がサイモン・シン、青木薫の翻訳、代替医療という三連コンボにより即購入。今もずっと枕元にある本。要は、(標準医療と認められていない)代替医療ってのは効くのか効かないのか!…に焦点をあてた本。

まず、現在標準となっている医療は、どういうプロセスで認められていったのか、「効果がある」と客観的に認められる臨床試験・科学的証明とはどのようなものか、を述べるのが、第1章「いかにして真実を突き止めるか」。この1章だけでも相当な読み応えあり。

●「瀉血」という過去の“標準医療”がいかに多数の人命を奪ったか、その証明がなされるまでの過程…確かに、欧州王侯貴族の評伝とか読んでいると、「絶対これ、瀉血で弱って死んだんだよな!」という人がいっぱいいる(ヴィクトリア女王のお父さんとか)。
●自分の手法が正しいことをグラフ作成によってプレゼンテーションする才能もあったナイチンゲール
●理屈が不明でも科学的に証明される成果があればその治療法は正しい、という考えで現代の標準医療が積み重ねられてきた(たとえば壊血病。ビタミンCが発見・単離されるのは、壊血病にレモンという治療法が発見された何十年も後)

それじゃあ、標準医療がクリアしてきた臨床試験(二重盲検験法)で、代替医療に効果があるのかどうか調べるとどうなる?というのが2章以降。鍼、ホメオパシー、カイロプラティック、ハーブ療法はそれぞれ章立てし、その他の代替医療は巻末付録にそれぞれ見開き2ページづつで結論付け。

その結果をまとめるとほぼ全滅

「まったく効果なし」「一部の疾患(腰痛とか肩こりとか)にわずかな効果があるとも言える」「標準医療のほうが効果がある」「プラセボ効果以上の効果は無い」「出費に見合う効果は無い」「患者から除去されるのはお金だけ」「場合によってはかなり危険」「この療法は受けないようにしよう」…こんなのばっかり。

まとめとなる第6章「真実は重要か?」でさらにトドメ。「プラセボ効果だけでも効果があればいいのでは?」というありがちな意見について、プラセボ効果しかない代替医療を正規医療と同列に行うことの危険を丁寧に批判。
●患者が標準医療を拒否する危険
●(標準医療に取り入れたとして)医者が患者にウソをつくことになり、信頼関係は失われ、中世暗黒時代のまじない医療に逆戻りすることになる。プラセボ効果が失われないためには、世界中の医療関係者が口裏を合わせねばならず、「王様が裸だ」と言えなくなる。
●プラセボ効果だけの効かない薬を作っても売れるなら、製薬会社は高い開発費をかけて効果のある新薬を開発するなんてバカバカしくなる。

現代科学・医学の欠点もふまえつつ、淡々と事実を積み上げ、代替医療の信奉者・施術者の言動の誤り・まやかしがつぎつぎと論破されている。

代替医療にどんな立場であれ関係や興味がある人には必読書。発売後、一度品切れになって現在また品切れ。いずれ増刷されるだろうけど。

★★★
鍼の科学的検証が可能になったのは、つい最近のことであり、検証が精査を極めれば極めるほど、鍼の効果のレベルや範囲が疑問視されている、という内容には当の鍼施術者にはかなりの衝撃だったようだ。

ここ↓のエントリにリンクされている代替医療施術者のブログの反応が興味深い。

代替医療のトリックに対する代替医療従事者の反応

代替医療を生業にしている人だと、そう簡単にこの本を受け入れられないだろうが、患者は「自分に効く・効かない」しかわからないんだから、施療をしている人こそ「本当に効果があるのか」を真剣に考えてほしい。本で論破されている論をそのまま書いてあるのには萎える。読まずに反論しているのか、読解力が無いのか、読んでも(自分に都合が悪いことは)脳がシャットアウトしてしまうのか。

★★★
英国カイロプラティック協会がサイモン・シンを名誉毀損で訴えたそうだが、自サイトで「カイロプラティックが万病に効く!」的な宣伝をしているのをツッコマれて、逆にそっちのほうが問題になっているそうな。見事なブーメラン。
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