本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
美人好きは罪悪か?
美人好きは罪悪か? (ちくま新書)美人好きは罪悪か? (ちくま新書)
(2009/06)
小谷野 敦

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古今東西、実在・創作上の美男美女についての雑学いろいろ。歴史上や古典文学の美女の話から、ひょいとその美女を演じた現代の女優の話になったり、古典的教養とサブカルチャー知識が縦横無尽に繰り出される語り口がもう面白くて仕方がない。以下テキトーに抜き出して要約。

●男同士の美人論議で、「個人差はあるけどそう激しくはばらつかない(一人が美人と思うと同じくそう思う男はほかにもいる)」、の例として「漫画家けらえいこを、いしかわじゅんがかわいいと言ったら、そうでもないじゃないかと言った人がいる。いしかわじゅんは自分の感覚は変わっているから、と説明していたが、筆者(小谷野)も可愛いと思う。」

自分もけらえいこは可愛いと思う。

●浮世絵(特に歌麿以降)の女はとても美しいとは思えない。浮世絵と同じ結髪着物の写真黎明期に撮影された美しい藝者たちがたくさんいる。ということは、浮世絵の女よりも現実の女のほうが美しいということになって、浮世絵の芸術的価値はいったいどこにあるのか。白鳳・天平時代の仏像のほうが浮世絵よりよほど美しい。本宮ひろ志の描く女のほうがずっと美しいし、吾妻ひでおの描く美少女に至っては、浮世絵などよりずっと高度な美を作り出していると思う。

言われてみれば、興福寺の阿修羅像の美しさとくらべると、版や刷りの芸術性はともかく、描かれた女たちが美女とはいいがたい。時代の美の基準どうこうではないレベル。

●美人でなければありえない人生の展開がある、という例としてノンフィクション作家の山崎朋子の自伝「サンダカンまで」の紹介。母親が妹ばかり可愛がって自分には辛くあたる、という少女時代。本人は辛い思い出として書いているが、第三者が読めばそれは朋子の美貌と知性を見抜いた母の嫉妬だと、同じ手法で描かれた萩尾望都「イグアナの娘」をひきあいに出して解く。その後も朋子本人は苦難の人生だったと書きたいのだろうが(本人も恵まれた境遇を自慢するわけにはいかないし)、美しく人間的魅力にあふれモテモテだった真実は隠しきれない。交際を断った男に逆上され鋭利な刃物で顔じゅうに傷をつけられるという、絶望のあまり自殺を考えるほどの出来事が起こるが、その後も複数の男に求婚され、そのうちの一人と結婚(他の魅力を感じなかった男の求婚は断っている)。少々の傷がついてもやっぱり美人は美人だった。

自伝で「自分は美形で魅力的でどこへ行ってもモテまくり」と書くわけはないので、これから自伝を読むときにはそのへん注意して読もうーっと。

ほかにも、美男美女の「もの書き」について。芥川龍之介、曽野綾子(「若き日の曽野の美貌は、日本文学史の奇蹟だ」…こういう文章、面白くて悶える)、最近では川上弘美、桜庭一樹、ロシア文学者の亀山郁夫の美男子ぶりなど。「亀さま萌え」…。

画家・森本草介が惚れこんだモデルや、ヴァイオリニスト諏訪根自子(すわねじこ)などなど、こんな美人がいたのかー!と、Google画像検索しながら読む。

★★★
若い頃は「積ん読」なんてモッタイナイことありえなかったのに…未読、あるいは途中まで読んで放置した本が増える一方。このまま包囲されて一生を終えるのか。
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