本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠(マイケル・モス)


New York Times記者の著者が、米国の巨大加工食品会社の関係者に取材。

原書題は「塩、砂糖、脂肪」。
この三つを健康に影響が出るほどブチこむことで、いわゆるジャンクフードは「ヘビーユーザー」を捕らえて離さない魅惑の食べ物となる。砂糖には「至福ポイント」というものがあり、絶妙に計算されて添加されている。脂肪にはその至福ポイントすらなく、「あるとしたら成層圏だ」とか。添加すればするほど美味しくなる。塩も食欲に火を点ける。

取材対象者のなかには、自社の製品の健康被害を懸念して、ヘルシーな製品を開発・販売しようと努力した人たちがいる。しかし砂糖・脂肪・塩を控えた加工食品は、結局「不味い」(そもそも美味しさを追求して開発されていたわけだし)。しかも価格が上がる。よって売れない。不健康なライバル社の製品に負ける。会社としては、株価が下がるような製品を作り続けるわけにはいかない。

会社の要職にあるような取材対象者は、自社の製品を全然口にせず、健康的な食生活・運動習慣を続けている。安価で不健康な加工食品は、マーケティングにのせられ食欲のおもむくまま、お金も時間も知識も無い階層が買うのだ。

結局、貧乏&格差が悪いんだ、という感じだが、この書では「最終的な選択権はわれわれの手にある。何を買うか、どれだけ食べるかを決めるのも私たち」…となっている。
戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係


戦時中に必要にかられて発明され、そのまま日常生活に定着しているモノはたくさんあるが、食の世界もまたしかり。古くはナポレオンが公募した戦闘糧食で「缶詰」が発明されたように、20世紀の軍隊用食料のための食料・製法・保存・梱包の技術がいかに開発されていったか、その技術が民間へ敷衍していったか。

効率よく、長期保存がきいて、お手軽…。かつ見た目や美味しさを可能な限り維持。研究者の努力は大変なもの。
著者のフードライターは料理が得意な手作り派だったのだが、この本の執筆後はそういう加工食品で食卓を簡単に済ませることにあまり罪悪感を感じなくなったとか。
効かない健康食品 危ない自然・天然(松永和紀)


健康食品やトクホのメーカーが宣伝する魅力的な効果。それがいかに根拠が無いか、それどころか健康被害の恐れさえあるのかが、懇切丁寧に説明されている。

この手の本が出るとつい購入。最新情報だし。
ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室(キャスリーン・フリン)
料理ができないことで自分に自信が持てない女たち、年齢も職業もさまざまな彼女たち10人を、遅咲きの料理人の著者が料理を指導し、共に考え、成長していく。料理だけではなく、買い物から、食品添加物、廃棄、農業・漁業の生産環境の問題などさまざまに考察を深める…。

スーパーで他人の買い物カゴの中身に驚き…というプロローグからひきこまれた。

ところで、スーパーのレジに並んでいると、無意識に前の人の買い物の中身を見つめている。自分の番が来たとき、後ろの人もやっぱり自分のカゴをじーっと眺めている。気になりだすと気になる。





賞味期限のウソ(井出 留美)


タイトルは売らんかな的な誇大タイトル。
3日ほど前にやっと冷蔵庫にある「賞味期限が去年」の卵を使い切った自分には、ごく当たり前なことが書いてある。

世の中には「賞味期限を過ぎたら即捨てる」人が大勢いるらしいので、このような本が必要かも。

スーパーの日付の古い商品から手にとって、買いすぎないようにする、のはできれば心がけたいが、「備蓄」という点からはどうかなぁ…。家庭内で、計画通りに食糧が消費されるわけではないし。





脂肪の歴史 (「食」の図書館)
文字通り、食指の動く巻だけ買ってるシリーズ最新刊。



食べるのがやっとだった時代は、美味・豊かさや権力の象徴だった脂肪。絶対に必要な栄養なのに、近年は特に嫌われ者。

飽和脂肪酸、トランス脂肪酸と悪の標的は突然変わり、企業はそのたびに、新しい製法を編み出す。「健康に良い」をうたう新商品が氾濫する一方で、昔ながらの「自然な」油脂への回帰もある。

極端に偏って摂取しなければいいだけだと思うけどね。
こってりした美麗図版多数。



おいしいロシア(シベリカ子)
「おそロシア」感はまったく無いゆる~い感じのコミックエッセイ。ロシア人のだんなさんと一緒に、一年間ロシアで暮らしたことを食を中心に描いた内容。ゆるゆるな絵柄なんだけど、美味しい感じは楽しめる。肉とか魚とか日本みたいにお手軽サイズにパックされていないので、料理の下ごしらえに手間がかかるのがちょっと大変そう。

ちゃんとビーツを使ったボルシチを食べてみたい…。

ところで「ブリヌイ」にはドライイースト入れるのか入れないのかどっちなんだろう。材料描写には描いてあったのに、レシピには書いてなかった。






戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る (岩波現代文庫)
新書版を持っているが、文庫版のための覚え書きとして「敗戦後(占領期)の食糧事情」が追加されていたので購入。

スーパーで買い物をしていると、ときどきこういう本の時代を思って、「商品棚がからっぽになる情景」を幻視してしまう。自分のところに損害がない遠くの災害でもたちまち日配品が不足する現代。ひとたび長期非常事態にでもなったらどんなに恐ろしい物資の不足に陥ることか…。

食欲が失せる真夏に読むと、妙に食欲がかきたてられる。





豚肉の歴史 (「食」の図書館)
「ハーブの歴史」が文字通り食指が動かなかったため購入せずにいたら、その後刊行が止まっていた。もう終わりか…と思っていたら第二期としてまたスタートしていた。しかし、「コメの歴史」「ウイスキーの歴史」…といまひとつ購入するファイトが湧かないラインナップ。

というわけで今回は、久々に食指が動く題材だったので購入。豚、かわいいよ、美味しいよ、豚。ジューシーでくせがなくて、いろいろな調味料と合い、ハムやらソーセージやら缶詰スパムやらの多種多様な加工品でも美味しい。読んでいて食欲そそられまくり。でも掲載されている可愛らしい豚の写真や絵画にはちょっと心が痛んだ。

★★★
読後はもちろん豚肉のおかずが頻出。
小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代(阿古 真理)

戦後に登場した料理研究家たちが、どのような時代背景でどのようなニーズに応えて登場したのか、そのレシピに込められた生い立ちと哲学を、わかりやすく斬新な切り口で紹介。「肉じゃが」「ビーフシチュー」をそれぞれの料理研究はどう作るかの比較は面白い。

戦中・戦後の食料不足で途切れてしまった「伝統的な家庭料理の作り方」を伝授する料理家、憧れの西洋料理を伝授する海外生活を経験したセレブ料理家たち。

働く女性のニーズに応えた「家庭料理のプロ」小林カツ代。彼女が家庭料理の斬新な発展に貢献した功績には驚かされる。息子のケンタロウの路線における親子の継承・発展という箇所もなるほどと思わされた。

栗原はるみのスケールの大きさもあらためて感じた。看板雑誌が途切れることなく刊行され続けているもんね…。こちらも息子が活躍中。ケンタロウ事故後の番組の後釜になっている。

連日家庭料理を作っている人にとっては面白さ確実。

著者の各レシピ本の読み込みが伺えるが、巻末に参考資料としてリストして欲しかった。あと本の内容には関係ないが、著者近影は意図してこういう表情にしているのだろうか…。不思議。

★★★
最近は材料炒めてコレを混ぜるだけ、というレトルト調味料がいっぱい発売されているので重宝している。
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