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本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
ラストエンペラーの私生活(加藤康男)


東京裁判での変節ぶりで周囲を呆れかえらせた溥儀だが、その生い立ちを知るとそういう人格が形成されるのもやむを得ないかな、と。

「私生活」ということで、宦官たちのこと、生涯めとった5人の夫人たちのことが主に書かれている。結局どの妻たちも溥儀の性的能力欠陥のためまともな夫婦生活が営めず、悲劇。日本の華族令嬢と結婚した弟の溥傑は、それにくらべると驚くほど「まとも」だ。

映画「ラストエンペラー」のゴージャスな画面の裏のドロドロ…といった感じ。
図説 ヴィクトリア女王の生涯: 王宮儀式から愛の行方まで


やたらとヴィクトリア女王関連の新刊を見かけると思ったら「生誕200年記念」だったのか。

河出書房新社「ふくろうの本」の村上リコ著のやつは全部持ってるので、やっぱり購入(最近、一番最初に発行された「英国メイドの日常」が表紙絵だけを変えて再発行されて、あやうく買うところだった)。
女官 明治宮中出仕の記(山川三千子)


明治帝 宮中に女官として仕えた華族令嬢の著作。表紙は著者ではなく、著者の上司にあたる柳原愛子(大正天皇生母)。

高貴な女の職場の陰湿ネチネチ具合、明治帝&皇后アゲ↑、大正帝&皇后サゲ↓など、庶民の好奇心を満たしてくれる内容。雅な、はっきり書かない文体で、「一読しただけでは、何が言いたいかよくわからない(解説文より)」、大正皇后非難がかなりキッツぅおす。

前回エントリの「皇太子婚約解消事件」を読んでからだと、皇族出身ではなかった大正皇后が、そのためにより厳しい評価に晒されたのではないかと思ったりした。
皇太子婚約解消事件(浅見 雅男)


大正時代の「宮中某重大事件」の前に、明治時代にものちの大正天皇妃となる皇太子妃候補の変更事件があった、というドキュメント。非の打ち所がない女性として内定された伏見宮禎子女王は、結局、九条節子に替わることとなった。選定にかかわった側近たちの日記を丁寧に読みといて、天皇・皇族・摂家・元勲たちの意思・思惑を解読している。

ただ一つ、「健康問題」だけが九条節子は伏見宮禎子女王よりまさっていた。病弱な皇太子の伴侶として健康は絶対条件だった。そして節子は四人の男子を産み、天皇の代行も立派に果たす。禎子は山内侯爵から熱烈に求婚され、結婚。子どもには恵まれなかった。

節子妃は昭和26年に崩御。禎子は名誉職につくなど社会的にも活躍し、昭和41年、80歳で没した。

この著者の天皇・皇族・華族についての著書がいろいろ面白そうなので読み漁っているところ。
空気の検閲 大日本帝国の表現規制(辻田 真佐憲)


本日購入。
王妃たちの最期の日々(上巻)

君主または君主の配偶者たち20人の文字通り「最期の日々」を中心とした評伝集。

アンヌ・ドートリッシュ(ルイ十四世の母)は王の母として絶対的な身分を得ていたものの、乳癌で「砒素を成分とする薬剤を使って病巣を壊死させ、その後に剃刀で一片ずつ組織を切り取」るという恐るべき“治療”を衆人環視の中で施された…とか、身分が高いのがあきらかに災いしている。

カトリーヌ・ド・メディシスの項で、母カトリーヌより先に死ななかった二人の子どものうち、
「美しいマルゴは母親からなおざりにされた」
(臨終時に)「王(アンリ三世)を唯一の相続人に指定したが、娘のマルゴには一言の言及もなければ、何もなかった」

とあるのを読んで、萩尾望都が「王妃マルゴ」を描いている理由の一つがこれかと思った。

下巻も併せて購入。
マリー・アントワネットの嘘(惣領 冬実、塚田 有那)
コミック「マリー・アントワネット」の副読本。コミック化にあたっての経緯、作者のこだわり、萩尾望都との対談など盛りだくさん。

本のタイトルはというと、第一章で、マリー・アントワネットにまつわる言い伝えの「嘘」を七つ取り上げている。

例の「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」セリフは嘘だという、いまさらな項目はどーでもいい。

そんなことより、ルイ16世とアントワネットに、結婚後七年間子どもができなかった真の理由に驚き!なんと2002年にフランスで発行された評伝(本邦未訳)で、歴史に埋もれていた手紙の存在により、赤裸々な事実があきらかになっていた。




従来説では

「ルイ16世は重度の包茎による不能で、医師から簡単な手術を勧められていたが、優柔不断な性格によりなかなか決断できず、業を煮やしたオーストリア皇帝ヨーゼフ2世(アントワネットの実兄)の説得により、手術を決断、ようやく正常な夫婦生活を営むことができた」

ところが新たに発見された、ヨーゼフ2世が弟に書いた手紙には、妹夫婦の性生活の様子(もちろんヨーゼフ2世は妹夫婦本人たちから直接聞いた)が具体的に書かれ、読めば「そりゃ子どもができないはずだ…」という内容。250年後にこんなことを世界中にバラされるなんて…。

ともあれ、コミックの副読本として両方読めばよりいっそう面白くなる内容だった。
今ひとたびの戦後日本映画(川本三郎)

昭和20~30年代の日本映画から、「ついこの間の戦争」の痕跡をとりあげた内容。

特に説明もなく登場する「戦争未亡人」とか「復員兵」に、映画の作り手が何を託して、観客が何を感じたのか、歴史というものの一端を感じる。

「ゴジラ」の首都破壊シーンで、逃げ惑う群集から唐突に、とある母子がクローズアップされる場面。逃げることをあきらめ死を覚悟した母親が子どもを抱きしめながら「もうじき、お父様のそばに行くのよ」と語りかける。ここにも戦争未亡人が。

ノスタルジーと言ってしまえばそれまでだが、いつ読んでも味わい深い文章。とりあげられた映画を観てなくても問題なく読める(観ればもっといいんだろうけど)。

ハードカバーを本棚の奥からひっぱりだして再読。
二度、文庫化されているが現在どちらも品切れっぽい。
奴隷のしつけ方(マルクス・シドニウス・ファルクス)
帝政ローマ時代の貴族、マルクス・シドニウス・ファルクスが綴った、ハウツー物「これであなたも一人前の主人!」
…という体裁の、現代人ケンブリッジ大教授による書。当時の文献から奴隷に関する記録をパッチワークし、架空の人物に託して語らせるというもの。当時の奴隷がどういう存在であったのか、表紙を描いているヤマザキマリの「テルマエ・ロマエ」「プリニウス」を事前に読んでいればよりわかりやすいかも。

精神は所有していないが、身体は所有している対等ではない相手をどうマネージメントするか。コストのかかる奴隷(標準的な奴隷だとかなり高価)を大事にしつつ、でも甘やかすと付け上がるのでそこは厳しく…。現代のビジネス教養として雇用側・被雇用側どちら視点でも読めるし、単に歴史書としても面白い。

★★★
これも図書館で借りたので、必死になって読む。壁にもたれた体育座りのポーズで読んでいたら、腰痛になった…。
柿渋(ものと人間の文化史)(今井敬潤)
柿渋とは、未熟な渋柿を潰し、圧搾して得た液を発酵させて造られた褐色の液体。防水・防腐効果を持つため、古くから木製品・和紙への塗布や麻・木綿などの染色に利用されてきた。また醸造用袋、漁具、養蚕用具などの生産用具、建築物の塗料としても用いられた。戦後、化学繊維や科学塗料の普及で利用は激減し、化粧品や食品添加物、工芸品などへの新たな利用方法の開発が進められている…。

近年やたらと加齢臭対策でうたわれている柿渋石鹸から、ふと興味をもってこの本を読んでみた。近世以降の文献、実地の聞き取り調査などで、柿渋がいかに生活に根ざしたものであったのかがわかる。ただし、消臭効果についての記述は無い。

本文で、60代くらいの人(この本の発行は12年前だから現在70代くらい)になると、柿渋のことを知らない、と書かれていた。現在80代の義父母は柿渋がポピュラーに使用されていた記憶がある。このへんが分かれ目みたいだ。

★★★
この「ものと人間の文化史」叢書は興味あるテーマが多いのだけれど、値段がちと高いので、主に図書館で借りて読んでいる。
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