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本に包囲された日々
部屋は本まみれ。家業の経理をこなしつつ、本を読む。
英国レシピと暮らしの文化史


レシピといっても料理だけではなく、具合が悪いときの治療法、人との付き合い方、家事流儀のあれこれなど、代々受け継がれた歴史と伝統ある「ご家庭お役立ちメモ」文化史。あまたの覚書をきちんとを整理保管しえた上流階級のひとびとが、大事に受け継いできた知の結集。知識の集積・情報の伝達の歴史が楽しい。
図説 英国執事(村上リコ)



映画やドラマをゆっくり観る時間が近年とれなかった。
ところが最近、定期的に来る「検査仕事」中に観ればいいことに気づき、今までちょっと観たかったけどなぁ…という作品を軒並み制覇。数年前のNHK放映中からずっと気になっていた「ダウントン・アビー」も年末年始にかけて全シーズン鑑賞。ついで積ん読だったこの本にやっと手をだせた。

「ダウントン・アビー」の執事カーソンさんは、かくあるべき執事の理想だけど、現実はなかなか厳しい。
ラストエンペラーの私生活(加藤康男)


東京裁判での変節ぶりで周囲を呆れかえらせた溥儀だが、その生い立ちを知るとそういう人格が形成されるのもやむを得ないかな、と。

「私生活」ということで、宦官たちのこと、生涯めとった5人の夫人たちのことが主に書かれている。結局どの妻たちも溥儀の性的能力欠陥のためまともな夫婦生活が営めず、悲劇。日本の華族令嬢と結婚した弟の溥傑は、それにくらべると驚くほど「まとも」だ。

映画「ラストエンペラー」のゴージャスな画面の裏のドロドロ…といった感じ。
図説 ヴィクトリア女王の生涯: 王宮儀式から愛の行方まで


やたらとヴィクトリア女王関連の新刊を見かけると思ったら「生誕200年記念」だったのか。

河出書房新社「ふくろうの本」の村上リコ著のやつは全部持ってるので、やっぱり購入(最近、一番最初に発行された「英国メイドの日常」が表紙絵だけを変えて再発行されて、あやうく買うところだった)。
女官 明治宮中出仕の記(山川三千子)


明治帝 宮中に女官として仕えた華族令嬢の著作。表紙は著者ではなく、著者の上司にあたる柳原愛子(大正天皇生母)。

高貴な女の職場の陰湿ネチネチ具合、明治帝&皇后アゲ↑、大正帝&皇后サゲ↓など、庶民の好奇心を満たしてくれる内容。雅な、はっきり書かない文体で、「一読しただけでは、何が言いたいかよくわからない(解説文より)」、大正皇后非難がかなりキッツぅおす。

前回エントリの「皇太子婚約解消事件」を読んでからだと、皇族出身ではなかった大正皇后が、そのためにより厳しい評価に晒されたのではないかと思ったりした。
皇太子婚約解消事件(浅見 雅男)


大正時代の「宮中某重大事件」の前に、明治時代にものちの大正天皇妃となる皇太子妃候補の変更事件があった、というドキュメント。非の打ち所がない女性として内定された伏見宮禎子女王は、結局、九条節子に替わることとなった。選定にかかわった側近たちの日記を丁寧に読みといて、天皇・皇族・摂家・元勲たちの意思・思惑を解読している。

ただ一つ、「健康問題」だけが九条節子は伏見宮禎子女王よりまさっていた。病弱な皇太子の伴侶として健康は絶対条件だった。そして節子は四人の男子を産み、天皇の代行も立派に果たす。禎子は山内侯爵から熱烈に求婚され、結婚。子どもには恵まれなかった。

節子妃は昭和26年に崩御。禎子は名誉職につくなど社会的にも活躍し、昭和41年、80歳で没した。

この著者の天皇・皇族・華族についての著書がいろいろ面白そうなので読み漁っているところ。
空気の検閲 大日本帝国の表現規制(辻田 真佐憲)


本日購入。
王妃たちの最期の日々(上巻)

君主または君主の配偶者たち20人の文字通り「最期の日々」を中心とした評伝集。

アンヌ・ドートリッシュ(ルイ十四世の母)は王の母として絶対的な身分を得ていたものの、乳癌で「砒素を成分とする薬剤を使って病巣を壊死させ、その後に剃刀で一片ずつ組織を切り取」るという恐るべき“治療”を衆人環視の中で施された…とか、身分が高いのがあきらかに災いしている。

カトリーヌ・ド・メディシスの項で、母カトリーヌより先に死ななかった二人の子どものうち、
「美しいマルゴは母親からなおざりにされた」
(臨終時に)「王(アンリ三世)を唯一の相続人に指定したが、娘のマルゴには一言の言及もなければ、何もなかった」

とあるのを読んで、萩尾望都が「王妃マルゴ」を描いている理由の一つがこれかと思った。

下巻も併せて購入。
マリー・アントワネットの嘘(惣領 冬実、塚田 有那)
コミック「マリー・アントワネット」の副読本。コミック化にあたっての経緯、作者のこだわり、萩尾望都との対談など盛りだくさん。

本のタイトルはというと、第一章で、マリー・アントワネットにまつわる言い伝えの「嘘」を七つ取り上げている。

例の「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」セリフは嘘だという、いまさらな項目はどーでもいい。

そんなことより、ルイ16世とアントワネットに、結婚後七年間子どもができなかった真の理由に驚き!なんと2002年にフランスで発行された評伝(本邦未訳)で、歴史に埋もれていた手紙の存在により、赤裸々な事実があきらかになっていた。




従来説では

「ルイ16世は重度の包茎による不能で、医師から簡単な手術を勧められていたが、優柔不断な性格によりなかなか決断できず、業を煮やしたオーストリア皇帝ヨーゼフ2世(アントワネットの実兄)の説得により、手術を決断、ようやく正常な夫婦生活を営むことができた」

ところが新たに発見された、ヨーゼフ2世が弟に書いた手紙には、妹夫婦の性生活の様子(もちろんヨーゼフ2世は妹夫婦本人たちから直接聞いた)が具体的に書かれ、読めば「そりゃ子どもができないはずだ…」という内容。250年後にこんなことを世界中にバラされるなんて…。

ともあれ、コミックの副読本として両方読めばよりいっそう面白くなる内容だった。
今ひとたびの戦後日本映画(川本三郎)

昭和20~30年代の日本映画から、「ついこの間の戦争」の痕跡をとりあげた内容。

特に説明もなく登場する「戦争未亡人」とか「復員兵」に、映画の作り手が何を託して、観客が何を感じたのか、歴史というものの一端を感じる。

「ゴジラ」の首都破壊シーンで、逃げ惑う群集から唐突に、とある母子がクローズアップされる場面。逃げることをあきらめ死を覚悟した母親が子どもを抱きしめながら「もうじき、お父様のそばに行くのよ」と語りかける。ここにも戦争未亡人が。

ノスタルジーと言ってしまえばそれまでだが、いつ読んでも味わい深い文章。とりあげられた映画を観てなくても問題なく読める(観ればもっといいんだろうけど)。

ハードカバーを本棚の奥からひっぱりだして再読。
二度、文庫化されているが現在どちらも品切れっぽい。
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